子どもを授かった話

親になりたい―トランス男子がアメリカで子どもを作ると決めた日

トランスジェンダーでも子どもがほしい

私はずっと子どもがほしいと思っていました。心のどこかで、家族を持つことに憧れていたし、自分の遺伝子を残したいという気持ちもありました。

でも同時に、ずっと避けていたことがあります。それは、「出産すること=自分が“女”であることを認める」みたいな感覚。僕にとってそれは、自分の性自認を否定するような、すごくつらいイメージでした。だから、子どもを持ちたい気持ちに蓋をしてきたんです。

でもある日、思い切ってパートナーに話してみました。「自分の卵子を使って、君の身体で子どもを産んでもらうって……可能だと思う?」って。

そしたら、パートナーは少しも迷わずに「いいよ」って言ってくれました。

その瞬間、なにかがスッと軽くなった気がしました。僕たちは“2人で”家族になろうとしている。そのことに、ただただ救われました。

でも、どうやって?

とはいえ、日本で同性カップルが体外受精を受けるのは、ほとんど不可能です。制度的にも倫理的にも壁が多く、相談できる医療機関もほぼありません。

そんな中、ネットで偶然見つけたのが、アメリカの生殖医療クリニックと日本人をつなぐエージェントのサイトでした。実際に同性カップルやトランスジェンダーの人たちが、アメリカで体外受精をして子どもを授かっているという実例も載っていて、希望が見えた気がしました。サイトを読みながら、「ここなら、僕たちのこともちゃんと受け入れてくれるかもしれない」って思ったんです。少しずつ情報を集めて、問い合わせをして、パートナーとも何度も話し合いました。費用、時間、リスク、不安……ひとつずつ向き合いながら、最終的に「やってみよう」と2人で決断しました。

私の卵子を採って、体外受精をして、それをパートナーの体に戻す。言葉にするとシンプルだけど、そこにたどり着くまでの道のりは、決して平坦じゃありませんでした。誰かの定義する「普通の家族」じゃなくても、私たちなりの家族のかたちがあっていい。親になる方法はいろいろあっていいし、トランス男子が子どもを持っても、なんの問題もない。この体験をこれから少しずつ綴っていこうと思います。誰かにとってのヒントや希望になりますように。そして、同じように悩んでいるあなたが、自分の気持ちを否定せずにいられますように。

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